rrbのブログ - 2009/06/10のエントリ
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天を仰いで思うこと からに 2009/06/10 12:00 am
からに
「なんやかんや言うてカラニ何もしてくれへん」 〜カラニは「〜しているのに」「人に物を借ってカラニ返すこと知らへん」 文末の強意の終助詞としては「何してんのや、大きいなりしてカラニ」「どうしたんや、変な顔してカラニ」のように用いる。原因・理由の意味の名詞「から」に基づく。江戸時代後期から使用。「そして」の意味では「まわしを持ってカラニ大関を寄り倒した」 (『京都新聞・折々の京ことば』堀井令以知より)
しばらくの間、コメント欄を閉じます。ご容赦ください。
四方山話(55) ちょっと気になる「ことば」の話
〜のほうをお持ちしました

「コーヒーのほうをお持ちしました」と使われる。もともと「〜のほう」には、物事をぼかしていったり遠まわしにしていったりする用法がある。「お勤めは?」と聞かれると、霞ヶ関の国家公務員であることをぼかして「ええ、お役所のほうに勤めています」といってみたり、教師であるという含みをもたせながら学校名をふせて「教育のほうの仕事です」などと答えたりする。また、相手の安否を気遣って、「その後、お仕事(お身体)のほうは順調ですか?」と尋ねたりすることができる。そこには自分の職業のことをあからさまにいったり、相手の仕事や健康状態のことをずけずけと質問したりするのは、やはり遠慮したほうがいいという気持ちの表れが見られる。これらは礼儀としての慎み深さを重んじた、きわめて日本語的な言い方といえる。

「君の会社、給料のほうはいいのか?」なども、ぞんざいな質問には違いないが、「〜のほう」があったほうが、質問者の、より遠まわしな慎み深い気持ちが出る。
一方「〜のほう」には、何らかの対比・比較する対象を念頭において、「ナシよりリンゴのほうが好き」とか「待つ身よりは待たされる身のほうがつらい」という言い方がある。
ファミレスでパスタとコーヒーを注文した場合、ウェイトレスがパスタを念頭において「コーヒーのほうはあとになさいますか」などと聞くことがある。「勉強のほうがすんでから遊びなさい」「僕は構わないが、奥さんのほうはいいのか」はもちろん、酒を念頭においていう「タバコのほうがやめられなくて」もこの例に含まれる。
ところが近年、物事をぼかしたり遠まわしにいったりする必要がない場面や、対比・比較の対象がないような場合に「〜のほう」が多用されている。「お買い上げのほうは都合○○円になります」「おつりのほうは○○円です」「コーヒーだけを注文した客にコーヒーのほうをお持ちしました」などがそれである。

(神戸) カメラ/EPSON R-D1s レンズ/NOKTON classic 35mm F1.4
使うほうは、遠まわしに慎み深くいったつもりであろうが、特に、金銭のやりとりなど、正確さが要求される場面では適切な言い方ではない。必要以上のぼかし表現は、どこかに「逃げ」の姿勢が感じられるとともに、意思の疎通を妨げる要因ともなる。注意が必要。パスタとコーヒーを注文した客に対して「コーヒーのほうはあとになさいますか」と聞くのは適切な表現。コーヒーだけを注文した客に対して「コーヒーのほうをお持ちしました」というのは適切な表現ではないということか…と、天を仰いで思うこと。
★前回のちょっと気になる「ことば」の話はここ(←クリック)

「なんやかんや言うてカラニ何もしてくれへん」 〜カラニは「〜しているのに」「人に物を借ってカラニ返すこと知らへん」 文末の強意の終助詞としては「何してんのや、大きいなりしてカラニ」「どうしたんや、変な顔してカラニ」のように用いる。原因・理由の意味の名詞「から」に基づく。江戸時代後期から使用。「そして」の意味では「まわしを持ってカラニ大関を寄り倒した」 (『京都新聞・折々の京ことば』堀井令以知より)
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四方山話(55) ちょっと気になる「ことば」の話
〜のほうをお持ちしました

「コーヒーのほうをお持ちしました」と使われる。もともと「〜のほう」には、物事をぼかしていったり遠まわしにしていったりする用法がある。「お勤めは?」と聞かれると、霞ヶ関の国家公務員であることをぼかして「ええ、お役所のほうに勤めています」といってみたり、教師であるという含みをもたせながら学校名をふせて「教育のほうの仕事です」などと答えたりする。また、相手の安否を気遣って、「その後、お仕事(お身体)のほうは順調ですか?」と尋ねたりすることができる。そこには自分の職業のことをあからさまにいったり、相手の仕事や健康状態のことをずけずけと質問したりするのは、やはり遠慮したほうがいいという気持ちの表れが見られる。これらは礼儀としての慎み深さを重んじた、きわめて日本語的な言い方といえる。

「君の会社、給料のほうはいいのか?」なども、ぞんざいな質問には違いないが、「〜のほう」があったほうが、質問者の、より遠まわしな慎み深い気持ちが出る。
一方「〜のほう」には、何らかの対比・比較する対象を念頭において、「ナシよりリンゴのほうが好き」とか「待つ身よりは待たされる身のほうがつらい」という言い方がある。
ファミレスでパスタとコーヒーを注文した場合、ウェイトレスがパスタを念頭において「コーヒーのほうはあとになさいますか」などと聞くことがある。「勉強のほうがすんでから遊びなさい」「僕は構わないが、奥さんのほうはいいのか」はもちろん、酒を念頭においていう「タバコのほうがやめられなくて」もこの例に含まれる。
ところが近年、物事をぼかしたり遠まわしにいったりする必要がない場面や、対比・比較の対象がないような場合に「〜のほう」が多用されている。「お買い上げのほうは都合○○円になります」「おつりのほうは○○円です」「コーヒーだけを注文した客にコーヒーのほうをお持ちしました」などがそれである。

(神戸) カメラ/EPSON R-D1s レンズ/NOKTON classic 35mm F1.4
使うほうは、遠まわしに慎み深くいったつもりであろうが、特に、金銭のやりとりなど、正確さが要求される場面では適切な言い方ではない。必要以上のぼかし表現は、どこかに「逃げ」の姿勢が感じられるとともに、意思の疎通を妨げる要因ともなる。注意が必要。パスタとコーヒーを注文した客に対して「コーヒーのほうはあとになさいますか」と聞くのは適切な表現。コーヒーだけを注文した客に対して「コーヒーのほうをお持ちしました」というのは適切な表現ではないということか…と、天を仰いで思うこと。
★前回のちょっと気になる「ことば」の話はここ(←クリック)

