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語感
投稿日時 2010-9-16 0:00:00
執筆者 rrb
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語感 先日の長期出張の際、出歩くことを控えて本を読みまくった。その中で出会った一冊の本が実に面白かった。今でも読み返している。本のタイトルは『軽くて深い井上陽水の言葉』という。この本は、明治大学の齋藤孝教授が、井上陽水の不思議な魅力を徹底解説している。とても読みやすい本で、190ページくらいであったが、2時間もかからなかった。その本の一部を掲載したい。

今年の夏もラジオ等で流れていた井上陽水の「少年時代」。この歌の素晴らしさは「どう響くか」ということも考えられているところにあるという。井上陽水は言葉の意味以上に音の響きを大切にするところがある。韻を踏んだり、語呂合わせをしたりして、歌にリズムを持たせる手法をよく使っているが、響きも意識しているということだ。高い音で伸ばすときは、ウよりもイの方がよいと考えているらしい。
『少年時代』
夏が過ぎ 風あざみ 誰のあこがれに さまよう 青空に 残された 私の心は 夏模様 夢が覚め 夜の中 永い冬が 窓を閉じて 呼びかけたままで 夢はつまり 想い出のあとさき 夏まつり 宵かがり 胸の高なりに 合わせて 八月は 夢花火 私の心は 夏模様

ん〜なるほど。井上陽水の歌にはこういう秘密やしくみがあったのだ。聞いていて心地よいのはこういったところも要因となっている。歌をつくるにも、韻を意識するというのはスゴイことだ。単に歌をつくるだけでなく、こういう手法も考え含めていくのが、本当のプロかも知れない、と感じた。 しかし、井上陽水は「普通の人は、曲を作るなんてとても難しいことで、特殊な才能がなければと考えているかもしれない。まったくそうではない。フスマ貼りと同じで、一種の仕事にすぎない」と言い切っている。 簡単に言えば、「曲作りは段取り仕事だ」というのだ。これには驚いた。と同時に、肩に力を入れて仕事をしている自分がつまらない存在に思えた。確かにそうだ。何事も段取りどおりにしていくと全てうまくいく。 この本は最近出合った本の中でもよい影響を与えてくれた本のひとつだ。少し値段は高いが機会があれば読んで欲しい。そろそろ読書の秋だ…と、天を仰いで思うこと。
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