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なんにもおへんけど

投稿日時 2010-3-10 0:00:00
執筆者 rrb
んにもおへんけど
直接の意味は「何もありませんが」。食事を客にすすめるときの慣用句。謙遜してへりくだっていうのが京ことばの特徴で、贈り物をするとき「あらあらしいもんどすが」などという。「ほんまにアラアラシイモンドスガ どうぞおひとつおあがりやしとくれやす」 あらあらしいはもとは粗野で繊細さがないこと。アラクタイは荒っぽい。「そんなアラクタイ積み方して砕けるよ」(『京都新聞・折々の京ことば』堀井令以知より)

人28号



確かにでっかい。想像以上にでっかい。神戸市長田区のJR新長田駅に昨年秋完成した「鉄人28号」を見上げた。大地に踏ん張り、こぶしを突き出す姿は、嬉しい時は「やったな!」、悲しい時には「元気出せ!」。そんな声が聞こえてきそうな雰囲気だ。近くにいたおじさんが「元気のない時はここへ来る、元気のある時もここへ来る」と言っていたが、その気持ち、なんとなく理解できる。



原作者の故横山光輝さんは神戸市出身。古里を焦土にしたB29爆撃機の強烈な記憶から着想し、22歳の時、雑誌「少年」に、鉄人28号を描いた。この鉄人、登場時は「破壊王」だったが、人気に応えて、金田正太郎少年が操る正義のロボットになっていったという。4年ほど前、鉄人誕生50年を知った新長田駅南の商店主らは、「これだと思った」という。がれきから立ち上がる姿がいい、原作者も身近な存在だ。そうして「KOBE鉄人プロジェクト」が発進した。



阪神大震災で長田区は約7割が被災した。人情自慢の商店街も多くが倒壊、焼失した。時間とともに、復興は進み、新しい再開発ビルに店と人は収まり、長田は整然ときれいになった。
しかし、買う人と商う人が混然とにぎわった下町の熱気が戻らない。賃貸料に悩み廃業する店も多く、得意客だった地場産業の職人も減ったということだ。



「鉄人を起爆剤に」と商店主らは、地域の説得や1億円近い寄付集めに歩いた。完成から3カ月めに100万人が訪れた。スタンプラリー、そばめし地図など見物客を商店街に呼び込む努力が今も続いている。震災から15年たった今、行政支援は年々減り、「これからが復興本番や」と商店主らはいう。「鉄人〜」と正太郎少年さながらに駆け寄る子どもたちもいた。平成の時代に新たに始まった鉄人とこの町の二人三脚を京都からも応援したい…と、天を仰いで思うこと。


 




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