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衆生済度

投稿日時 2008-11-20 0:00:00
執筆者 rrb
ゅじょうさいど…仏や菩薩が生きているもの全てを迷いの苦しみから救い出し、悟りへと導くこと。
◇ちょっと予備知識 → 仏教語。「衆生」は仏の救済の対象となる。迷いの世界にいる生き物すべて。
                「済度」は迷い苦しむものを悟らせること。

い! 「一昨日からの寒さはなんなんだぁ〜」と叫びたくなるくらい寒い。外に出るのがイヤになる。写真を頼まれたので外へ。それも山の中。手がかじかむ、鼻水が出る。山の寒さをなめたらあかんと思った。

たみの絵馬(御香宮神社)
伏見義民猿曳絵馬算額などで、たびたび登場する京都市伏見区の御香宮神社の絵馬堂。ここには、百枚を超す大小さまざまな絵馬の額が掛かる。女性のねたみにちなんだ物語を生んだ絵馬が、約500年前にあったとされる。そのお話とは…。



御香宮の拝殿で、行商の男が夜を明かそうとまどろみかけた。枕元で声がする。目をこすると直衣姿の男が立っていた。「高貴なお方がこちらで遊ばれる。脇にのいてくだされ」。現れたのは女房と侍女。明かりがともり、料理や酒が並ぶ。



「一緒にどう?」。女房に誘われ、商人が恐る恐る近づくと、夢のような美しさに見とれてしまう。やがて女房が琴を、侍女が胡弓(こきゅう)を弾いて歌を唱和した。男はお礼に、花形の手箱を女房に贈った。侍女に琴づめを渡す際、か細い手を握ってしまう。侍女も笑顔で男の手を握り返してきた。



突然、女房は顔をこわばらせ、侍女に杯の並んだ台座を投げつけた。侍女の顔から血が滴り、着物を赤く染める。商人が驚き、飛び上がったと思ったら、夢がさめた。



翌朝、商人は神前に並んだ絵馬を見て驚く。楽器を弾く女房と侍女、直衣姿の男も、うり二つに描かれていたからだ。しかも侍女の顔のあたりは大きく裂けている。絵は誰の作か、分からない。



この話は、江戸前期の仮名草子作者、浅井了意が1666年に著した「伽婢子(おとぎぼうこ)」に収められる。中国や朝鮮の怪談を翻案した浅井はなぜ、御香宮神社を舞台にしたのか。約500年前の御香宮神社の記録はないが、「さもありなんと読者に思わせる必要があったのだろうか」と創作時期の神社と時代背景に注目する。



伏見の港や宿場は栄え、御香宮の知名度も上げた。また1755(宝暦5)年に絵馬堂が建つまで、社殿に絵馬が掛かり、物語の筋と重なる。中には幾何の問題を記した額もあり、解答が別の神社へ奉納されたこともある。



御香宮の絵馬が人々の話題となり、文化交流の役割を果たしていたと考えられる。似たような風俗画がなかったとは言えないのではないだろうか。



浅井は唱道のため仮名草紙を著したとされる。絵の女性ですら、しっとに駆られ残忍になる。浮世の女性への戒めと、男性にも誤解を生むようなそぶりを慎むよう説いている気がする…今京都。


 




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