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時代錯誤

投稿日時 2008-5-10 0:11:43
執筆者 rrb
だいさくご…いつまでも昔ふうのものに固執すること。考えや行動などが時流に合っていないこと。時代遅れ。アナクロニズム。
◇ちょっと予備知識 → 「錯誤」は認識が誤っていること。

野天満宮 大黒天燈籠
学問の神様を祭る北野天満宮を訪れたその日は梅の季節に入り、多くの参拝者で賑わっていた。



国宝の社殿をはじめ、境内には重要文化財も多いが、あまり知られていない隠れたスポットもある。石燈籠の台座に浮き彫りされている「大黒天」もその一つ。天神さんの七不思議(七不思議については、また別の機会に掲載する予定)にも数えられる。



高さ30cm、幅60cmの大黒さんは、ずきんをかぶり、右手に小づち、左手に米俵を抱える。特徴は大きく開けた口。この中に、落ちないように小石を置くことができると、願い事がかなうという。



試みたが、なかなかうまく納まらない。それもそのはず。直径2cmほどの小さな穴が左右に並んだ口の部分は、下に向かって傾いている。
その上、度重なる挑戦のせいか、表面は磨かれたようにつるつるで滑りやい。「できた」と思い手を離すと、とたんに落ちてしまう。



燈籠の正式な寄進記録はないという。手掛かりは「大黒組」「安政二歳(一八五五年) 十月吉日」と刻まれた記銘だけだ。



話によると、その当時、河原町に大黒屋という質商があった。ある時、木彫りの大黒天像を手に入れて祭ったところ、商売が繁盛したという。この大黒屋を中心とした質商組合「大黒組」が商売繁盛を願って、寄進したとみられている。



では、口に小石を入れるようになったのはどうしてだろう。誰が、どのようにして始めたのか分からない。
当初は「お金がたまる」「商売が繁盛する」という願いが込められた民間信仰だった。成功した小石を財布に入れておくと「お金がたまる」という説もあり、修学旅行の時期には生徒が列をつくって試みる姿も見られるという。



訪れたこの日は入試シーズンとあって、境内には受験生とみられる若者の姿もあった。なでたところが良くなると伝わる「神牛の像」の頭を触っている人は見掛けても、燈籠の前に足を運ぶ人はいない。「滑って、落ちてしまう」のは、やはり受験生にとっては縁起が悪いということか…。



大黒さんの石燈籠は重要文化財「三光門」の東南に位置する。ちょっと時季が過ぎた掲載になってしまったが、それもまた一興かと。それにしても「願いを込め口に小石」は、何度試みても滑り落ちてしまう…今京都。


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