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火伏せの大イチョウ、水を噴き類焼防ぐ?

投稿日時 2015-12-8 0:00:00
執筆者 rrb
京都市中京区の本能寺。市民や修学旅行生が行き交う寺町通の繁華街から法華宗大本山本能寺の門をくぐると、目の前に閑静な境内が広がる。さらに進むと本堂の奥、南東角に大きなイチョウがそびえる。2004年に京都市の保存樹に指定された「火伏せの大イチョウ」だ。

名前の由来は1788(天明3)年の旧暦1月に京都を襲った大火災「天明の大火」にさかのぼる。市内中心部全域に火の手が回ったといい、お寺の「法華宗年表」は被害を「禁裏、二条城、公家65、町家18万余、神社220余、寺院928」と記録する。炎は、本能寺にも迫った。本堂などが次々に焼失していくなか、イチョウから水が噴き出して、近くの建物は類焼を免れたという。イチョウの西隣にある塔頭「龍雲院」の門と建物の一部は天明の大火以前のまま残っている。

木が本当に水を噴き出して、迫る炎を食い止めたのだろうか。イチョウの葉は肉厚で含水率が高く、防火林として街路樹に用いられる。実際に水を噴くことは考えにくいが、水分の多い生木が熱せられると、焼き魚を作っている時のように、表面にあぶくが出ることもあるのではないかと想像する。伝承は類焼を食い止めたイチョウの役割を強調して生まれたのだろう。

本能寺の「能」の文字は長く「☆」と併用されてきた。1928(昭和3)年に現在の本堂が建立され、境内の建物が整備されたときから、公式には「☆」だけを使うようになった。旁(つくり)の「去」から「二度と火災に遭うことがないように」という願いが込められた。同時に胴回り3mほどに成長したイチョウにしめ縄が飾り付けられた。火伏せの大イチョウにあやかろうと、本能寺の札を求める人がいるといい、近所では火難よけの神で知られる愛宕神社の札と並べて張っている店もあるという。

なお、本能寺は京都市中京区寺町通御池下ル、京都市営地下鉄東西線の市役所前駅すぐ。1415(応永22)年に日隆聖人が「本応寺」として建立して以降、宗教上の対立に加え、本能寺の変などで焼失と再建を繰り返してきた。移転も重ね、火伏せの大イチョウがある現在の場所で5カ所目となる…という今京都。

【注】☆は「能」の旁を去に変えたもの。たびたび火災に遭うので火=ヒを払うという意。





「本能寺の変」といえばエグスプロージョン。彼らはダンサー・振付師であり芸人ではない





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