rrbのブログ - 2009/02/26のエントリ
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今京都 試金石 2009/02/26 12:00 am
しきんせき…そのものの価値や、人物の才能などを判断するために試してみる物事。
◇ちょっと予備知識 → もとは貴金属をこすりつけて純度を判定した硬い石。
類義語に瀬踏(せぶみ)がある。
ひもじい (旧フォトヴィレッジ 2007年9月9日掲載)
現在の日本においては「ひもじい」なんて言葉はもう死語かも知れないと思われるほど飽食社会。しかし、100年に一度といわれる不況のさなか、再び使われるようになるかも知れない、とは勝手な想像か。

『日葡辞書』に「ひもじ」は収められている。それによると「空腹である。これは女ことばである」とされている。「ひもじ」は、鮒のことを「ふもじ」、髪のことを「かもじ」、御鮨を「すもじ、おすもじ」、杓子を「しゃもじ」などといった「御所ことば」のひとつであるという。言葉の上一字に「文字(もじ)」という語をつける「御所ことば」は他にもある。烏賊(いか)は「いもじ」、海老は「えもじ」、蛸は「たもじ」、にんにくは「にもじ」。しかし、ニラはなぜか「にもじ」とならず「ふたもじ」、さらに、ネギは「ねもじ」とならず「ひともじ」、蕎麦は「そもじ」、帯は「おもじ」、我は「わもじ」、そなたは「そもじ」、娘は「ごもじ」といった具合。まるで暗号のような言葉だけれど、そもそも「御所ことば」というものは室町時代の初期に宮中御所の女房たちの間で発生した。南北朝時代の頃から公家社会と庶民の間に接触する機会が多くなり、庶民の口にする食べ物が貴族階級の食膳にものぼるようになってきた。そこで女房たちは庶民の用いる名称をさけて、隠語的婉曲的な性格をもつ「御所ことば」を形成していったという。

15世紀のはじめには、「御所ことば」は宮中だけでなく室町御所、つまり足利将軍家でも使用されるようになる。御所ことばは日常生活に密着した食べ物、身の回りのものをさす言葉が多い。その中で空腹という状態を表す「ひもじ」は、どちらかといえば異質な「御所ことば」といえる。恥ずかしいは「はもじ」、心配は「しんもじ」、急ぐことを「いそもじ」、お目にかかることを「おめもじ」など。

「ひもじ」のもとの言葉は「ひだるい」であった。この最初の「ひ」一字に「文字」をつけて「ひもじ」。末尾の「い」はのちに形容詞的につけられたということ。「ひもじと言ふ事は強い武士の謂はぬ事」とは、近松門左衛門の浄瑠璃の一節。まさに「武士は食わねど高楊枝」の心境である。武家社会のなかで、メンツに生きる男性社会。いっぽう、ひもじいときはひもじいのだと、御所のなかで隠語めいて「ひもじ」という言葉を語り合った女房たち。ここにもタテマエを重んじる男とホンネで生きる女の好対照ぶりが見えそうね。

この隠語めいた言葉は現在の高校生の間で案外流行るかも知れないと思う。形は違うがギャル文字やら絵文字がその隠語に通じるものがあるからね。意外なことに語源が京都にあった言葉のお話vol.10(改訂・再掲)…今京都。 ※写真は京都の町並みで本文とは関係ないのであしからず。
★前回の京が語源「あいづちを打つ」はここ(←クリック)
★旧フォトヴィレッジで掲載した「京が語源」はここまでで、vol.11「らちがあく」へとつながる。

◇ちょっと予備知識 → もとは貴金属をこすりつけて純度を判定した硬い石。
類義語に瀬踏(せぶみ)がある。
ひもじい (旧フォトヴィレッジ 2007年9月9日掲載)
現在の日本においては「ひもじい」なんて言葉はもう死語かも知れないと思われるほど飽食社会。しかし、100年に一度といわれる不況のさなか、再び使われるようになるかも知れない、とは勝手な想像か。

『日葡辞書』に「ひもじ」は収められている。それによると「空腹である。これは女ことばである」とされている。「ひもじ」は、鮒のことを「ふもじ」、髪のことを「かもじ」、御鮨を「すもじ、おすもじ」、杓子を「しゃもじ」などといった「御所ことば」のひとつであるという。言葉の上一字に「文字(もじ)」という語をつける「御所ことば」は他にもある。烏賊(いか)は「いもじ」、海老は「えもじ」、蛸は「たもじ」、にんにくは「にもじ」。しかし、ニラはなぜか「にもじ」とならず「ふたもじ」、さらに、ネギは「ねもじ」とならず「ひともじ」、蕎麦は「そもじ」、帯は「おもじ」、我は「わもじ」、そなたは「そもじ」、娘は「ごもじ」といった具合。まるで暗号のような言葉だけれど、そもそも「御所ことば」というものは室町時代の初期に宮中御所の女房たちの間で発生した。南北朝時代の頃から公家社会と庶民の間に接触する機会が多くなり、庶民の口にする食べ物が貴族階級の食膳にものぼるようになってきた。そこで女房たちは庶民の用いる名称をさけて、隠語的婉曲的な性格をもつ「御所ことば」を形成していったという。

15世紀のはじめには、「御所ことば」は宮中だけでなく室町御所、つまり足利将軍家でも使用されるようになる。御所ことばは日常生活に密着した食べ物、身の回りのものをさす言葉が多い。その中で空腹という状態を表す「ひもじ」は、どちらかといえば異質な「御所ことば」といえる。恥ずかしいは「はもじ」、心配は「しんもじ」、急ぐことを「いそもじ」、お目にかかることを「おめもじ」など。

「ひもじ」のもとの言葉は「ひだるい」であった。この最初の「ひ」一字に「文字」をつけて「ひもじ」。末尾の「い」はのちに形容詞的につけられたということ。「ひもじと言ふ事は強い武士の謂はぬ事」とは、近松門左衛門の浄瑠璃の一節。まさに「武士は食わねど高楊枝」の心境である。武家社会のなかで、メンツに生きる男性社会。いっぽう、ひもじいときはひもじいのだと、御所のなかで隠語めいて「ひもじ」という言葉を語り合った女房たち。ここにもタテマエを重んじる男とホンネで生きる女の好対照ぶりが見えそうね。

この隠語めいた言葉は現在の高校生の間で案外流行るかも知れないと思う。形は違うがギャル文字やら絵文字がその隠語に通じるものがあるからね。意外なことに語源が京都にあった言葉のお話vol.10(改訂・再掲)…今京都。 ※写真は京都の町並みで本文とは関係ないのであしからず。
★前回の京が語源「あいづちを打つ」はここ(←クリック)
★旧フォトヴィレッジで掲載した「京が語源」はここまでで、vol.11「らちがあく」へとつながる。

